Blog and News

肉離れ、捻挫などの際、アイシングはしたほうがいいのか?しないほうがいいのか?

先日、ツイッターである研究論文が話題になりました。

その論文とはこちらです。

アイシングは肉離れなどの筋損傷後の再生を遅らせる

https://research-er.jp/articles/view/98701

『神戸大学大学院保健学研究科の荒川高光准教授、博士後期課程大学院生(当時)川島将人らと、千葉工業大学の川西範明准教授らの研究グループは、遠心性収縮モデルマウスを用いて、筋損傷に対するアイシングが筋再生を遅らせることを明らかにしました。またこの現象に、炎症性マクロファージの損傷細胞への浸潤度が関与する可能性を明らかにしました。今後、肉離れなどの重い筋損傷に対するアイシングの是非が問われていくことになります。』

ということで、どのような方法で研究したかをざっくりまとめてみます。

まず重度の肉離れをした筋肉のサンプルを作ります。

『そしてその肉離れした筋肉のサンプルにアイシングしました。アイシングの方法はポリエチレンの袋に氷を入れて皮膚の上から30分間、2時間ごとに3回行い、これを損傷2日後まで継続しました。』

(アイシング時間30分間はちょっと長いかなあ?と思います。)

『損傷2週間後の再生骨格筋を観察すると、アイシングをした群はアイシングをしていない群に比べてアイシングによって骨格筋の再生が遅延している可能性があると分かりました。』

じゃあなんでアイシングで骨格筋の再生が遅れたのか気になりますよね?

『ここに至るまでの再生過程で何が起きているのかを調べるため、アイシングを施した群と施していない群の動物で、時間経過を追って筋を採取して調べました。』

これを比較するとなぜ遅れたのか考察しやすくなりますね。

『損傷筋の再生過程では、炎症細胞が集まってきて、壊れた筋のゴミのようなものを貪食し、そこに新しい筋が作られていくのですが、アイシングをすると損傷した筋細胞の中に炎症細胞があまり入っていかないことがわかりました』

炎症を抑えた方が痛みが抑えられると個人的に考えていましたが、炎症を抑えてしまうと損傷した筋肉の再生が遅れてしまうということか?

『損傷筋の中に入る代表的な炎症細胞としてマクロファージがあり、マクロファージには主に貪食を行って炎症反応を引き起こす炎症性マクロファージと、炎症反応を抑制し、修復を促す抗炎症性マクロファージが存在します。炎症性マクロファージは抗炎症性へと特性を変えていくことが想定されています。本研究チームの実験の結果、アイシングを施すと、炎症性マクロファージの到着が遅れていることがわかりました』

損傷した筋肉のの中に炎症性マクロファージが入り込むことが重要なわけですね。

ということは筋損傷部位に鍼を打ったり灸を据えるともしかして炎症性マクロファージを損傷部位に集中させることが示唆されるから肉離れが治りやすくなるのでは?と思いましたが今回はアイシングの話でした。

『これらの結果から、遠心性収縮による重い筋損傷の後にアイシングを施すと、炎症性マクロファージによる損傷筋の貪食が十分に行われず、それが原因で新しい筋細胞の形成が遅れる可能性が示されました。』

つまり重い肉離れの際はみなさんかなり痛がるので早急にアイシング!と考えていましたが実はそれやると治り遅くなるかも?ということですね。

『今回のようにアイシングを施すと回復が悪くなってしまう重い筋損傷がある一方、アイシングを施してもよい程度の軽微な筋損傷、というものが存在する可能性も否定できません。その線引きが今後の課題です。われわれは今、軽微な筋損傷に対するアイシングがどのような影響を与えるのかを検討中です。』

なるほどね。今回は重い肉離れの場合で軽い肉離れの場合はアイシングが有効な場合もあるかもしれないということですね。

あと、この研究の対象はマウスであって、もしかしたらヒトでは違う結果になるかもしれないですよね。

マウスの筋肉ちっちゃいですし、それを全部30分氷で冷やしたらそりゃあ、回復遅れるでしょ、って思ってしまいました。

たとえヒトがふくらはぎをひどく肉離れしたとして、ふくらはぎ全体を覆うようにアイシング30分もしないですよね?損傷部位の周囲だけを10-15分くらいアイシンングするのが通常ではないでしょうか?

いずれにしましても

『今後、筋損傷の程度に合わせたアイシングの施し方などをさらに検討していき、スポーツ現場や臨床のリハビリテーションにおけるアイシングの是非について、正しい判断を行うための材料を提供します。』

ということですので今後の研究をさらに進めていただきたいと思います。

ところで1978年、アメリカでDr.Gabe Mirkin(ゲイブ・マーキン)が、RICE(Rest、Ice、Compression、Elevation)をはじめて提唱しましたが、彼自身が今はアイシングと完全な休息は間違いだったと訂正しています。

https://www.drmirkin.com/fitness/why-ice-delays-recovery.html

以下その論文のスポーツで怪我した際の推奨させる対応方法です。

『けがをした場合は、すぐに運動をやめてください。痛みがひどい場合、動けない場合、混乱したり、一瞬でも意識を失ったりした場合は、救急医療が必要かどうかを確認する必要があります。開いた傷は掃除してチェックする必要があります。可能であれば、負傷した部分を持ち上げて重力を利用し、腫れを最小限に抑えます。スポーツ傷害の治療経験のある人は、骨が折れておらず、動きによって損傷が増加しないことを確認する必要があります。損傷が筋肉または他の軟組織に限定されている場合、医師、トレーナー、またはコーチが圧迫包帯を適用することがあります。怪我にアイシングをすると痛みが軽減されることが示されているので、怪我が発生した直後に、怪我をした部分を短時間アイシングすることが許容されます。最大10分間冷やし、20分間除去し、そして、10分間のアイシングを1回または2回繰り返します。怪我をしてから6時間以上アイシングをする理由はありません。』

ということで、怪我の直後に10分アイシング、20分休憩、10分アイシングを痛みを抑えるためにやるのがおすすめのようです。それ以上やると怪我の治りが遅くなる、ということですのでアイシングのやりすぎに気をつけましょう。

私が以前スポーツ外傷について学んだときは48時間はアイシングを繰り返せと習ったので、随分時代は変わったのだなあ、と改めて思いました。

以前の常識が今は非常識になっている例は数え上げればきりがありませんが、そういういわゆるパラダイムシフトに気付けるか気づけないかは日々学び続ける姿勢によるのだろうと思います。

アイシングに関しては今後さらに研究が進んでいくと思います。

結局、理想的なアイシング方法とは?そもそもアイシングはした方がいいのかしない方がいいのか?

時と場合によるのでしょうが、今のところは炎症を抑えるためにやるのではなく、鎮痛を促すために短時間行うのが良いとされるようですのでそうしていこうと思っています。


blog / 未分類